Enterprise IoT: Strategies and Best Practices を読んだ

上司になる人に、「事業ドメインへの理解が足りないので勉強になる本があれば教えてください」と聞いたらこの本を紹介されたので読んだ。

洋書の専門書を読むのは大学の研究室以来で正直結構しんどかったけど、自分の経験に近い領域のところは比較的楽に読めたので頑張れた。

感想

The Ignite | IoT Methodology というIoTビジネスをやっていく上での方法論の紹介とケーススタディが中心となっている本。 エンタープライズと名前がついているだけあって、ある程度大企業を前提としてどのようにIoTサービスを作り出していくのかが、技術的・ビジネス的な側面から述べられている。個人的に面白かったのは、製造業と、インターネットサービスという2つの性質の違う世界をどうしていけばいいのか「Clash of Two Worlds: Machine Camp Versus Internet Camp」について。文化的な違い、開発サイクルの違い、アジャイル vs ウォーターフォール、同じ製品に対するサービス開発のアプローチの仕方の違いなどが指摘されていて、納得感があった。ただ、じゃあどうすればいの?という質問に対しては、明確な解は特に提示されてなかった気はする。このへんはプロジェクトの規模にもよるので仕方がないとは思うけど。

上記意外では、以下のような話が印象に残っている。

  • IoTビジネスの難しさ
    • そしてデバイスのコストが低く見積もられがち。PoCの段階ではラズパイのようなもんで行けても、実運用では使えない…ということはよくあるらしい。デバイスが大量に必要なサービスではコストが想定よりかかってしまうと、事業への影響がかなり大きい。
    • 売り切りの商品に対する IoTサービスでは商品価格にIoTサービスのコストを乗せる必要があり価格設定が難しい
    • バイスもそうだが大量のデータを最初から取り扱う必要がある場合が多く、コストの面で普通のSaaSなどよりも厳しい。
  • IoTサービスのアーキテクチャについて
    • すべてをバックエンド(クラウド)に集めるのでは通信コストや、データ保存コストが高くなりすぎる場合がある
    • ゲートウェイを用意して一度そこで集約したり、デバイス側にロジックをもたせて計算後にバックエンドにあげるアーキテクチャも選択肢の一つとなる

技術面とビジネス面の両方でこれまで知らなかったことを網羅的に知ることができ、とても勉強になる本だった。自分は一応一通り目を通したけど、自分の関わる仕事と関係の薄い技術に関するお話はサクッと飛ばしても良さそう。